「前回の問い合わせはどうなっていますか」「説明資料をもう一度送ってください」。こうした連絡に、その都度メールを探して回答していないでしょうか。顧客が自分で必要な情報を確認できる窓口を用意すると、問い合わせの受付から経過確認までを整理しやすくなります。
IPPortalInstallerは、vtplusで顧客向けのカスタマーポータルを導入するためのエクステンションです。日本語に対応したポータルの配置、接続URLの設定、導入前の差分確認、ロゴ登録、通信確認、適用履歴からの復元を管理画面から行えます。
顧客はポータルへログインし、許可された範囲で問い合わせやFAQ、共有資料などを利用します。社内のCRM運用と顧客向けの窓口をつなぎ、情報のやり取りを整理する仕組みとして活用できます。
この記事では、顧客が利用する機能と管理者の導入機能を順に説明し、公開範囲の決め方、設定手順、運用開始前に確認することまで詳しく解説します。
1.IPPortalInstallerとは?社内のCRMに顧客向けの窓口を用意する
カスタマーポータルは、顧客がログインして問い合わせや公開情報を確認する専用のWeb窓口です。社員が利用するCRMの管理画面とは、使う人と公開する情報が異なります。
IPPortalInstallerは、この顧客向け窓口を導入・管理する役割を担います。同梱されたポータル本体と必要なCRM側ファイルを、事前確認したうえで適用する構成です。
FAQと公開資料の利用
許可された情報の参照
公開する項目と対象情報
作成・編集の可否
問い合わせと関連情報を管理
顧客向けの情報を整備
ノーコード活用では「社内の情報を顧客へ届ける部分」を担う
業務アプリで情報を入力・管理しても、顧客への連絡がメールだけなら、確認のたびに担当者の作業が発生します。ポータルは、顧客自身が確認できる範囲を決め、継続的なやり取りの入口を整える考え方です。
このエクステンションでは、管理画面から配置やロゴ変更を進められます。ただし、サーバーの権限、HTTPS、バックアップ、公開権限の設計まで不要になるわけではありません。導入作業は管理者が行い、環境の準備はサーバー管理担当者と確認します。
ポータルの導入機能と、顧客の操作機能を分けて理解する
「インストーラーに何ができるか」と「配置されたポータルで何ができるか」を区別すると、導入計画が明確になります。例えばロゴ変更はIPPortalInstaller、顧客が閲覧できる項目や担当ユーザーの設定は標準ポータル設定で扱います。
| 区分 | 主な内容 | 設定・利用する人 |
|---|---|---|
| IPPortalInstaller | 配置、URL設定、差分確認、ロゴ登録、診断、履歴・復元 | CRMの管理者 |
| 標準ポータル設定など | 公開モジュール・項目・権限、担当ユーザー、利用者の有効期間、送信メールの設定 | CRMの管理者・運用管理担当者 |
| 配置されたポータル | ログイン、問い合わせ、コメント、FAQ、許可された資料や関連情報の確認 | 利用を許可された顧客 |
2.問い合わせを登録し、対応状況とやり取りを確認する
ポータルの中心的な使い方が、問い合わせの受付と経過確認です。顧客が入力した内容をCRMの問い合わせ情報として扱い、対応の途中で必要な情報を補足していきます。
顧客が問い合わせを新規作成する
問い合わせ画面には、件名や説明などを入力する新規作成の仕組みがあります。顧客が実際に入力できる項目と作成の可否は、対象モジュールの公開設定や権限に従います。
運用を始めるときは、「何が起きたか」「いつからか」「対象の製品や契約は何か」など、受付後の確認に必要な情報を整理しましょう。すべてを長い自由記述で求めるより、必要な項目と記入の説明を絞るほうが、受付時の情報をそろえやすくなります。
状態による絞り込みで、問い合わせを探す
問い合わせ一覧では、状態による絞り込みや並べ替え、ページ切り替えを行う構成になっています。顧客が、継続中の問い合わせと完了した問い合わせを区別して探す用途に使えます。
画面にある「すべて」は、利用者に許可された範囲のすべてを意味します。他社や、閲覧権限のない情報まで無条件に表示する設定ではありません。自分に関連する情報と取引先に関連する情報の範囲は、公開設定と顧客・取引先の関連付けを確認します。
コメントと更新履歴で、前後の経緯を確認する
詳細画面には、コメントや更新履歴を確認する仕組みがあります。顧客からの追加説明と担当者の案内を、対象の問い合わせに関連する情報として追いやすくなります。
同梱APIでは、コメントの取得時に非公開コメントを除く処理を確認できます。ただし、公開欄へ社内向けのメモを書いてしまうと、意図しない情報共有につながります。「顧客に伝える回答」と「社内の検討メモ」の入力先を運用ルールとして明確にします。
完了状態ではコメント入力などの操作が制限される画面があります。完了後の追加相談を別の問い合わせにするか、担当者へ連絡するかも決めておくと、顧客が迷いにくくなります。
問い合わせに関係するファイルを共有する
問い合わせには、ファイル添付の導線があります。公開された関連文書やコメントに付いたファイルを確認・ダウンロードする仕組みも含まれています。例えば不具合の写真や説明資料を、どの問い合わせの情報か分かる形で扱う用途が考えられます。
添付できる容量・形式は、ポータル、CRM、PHP、Webサーバーなどの設定を含めて確認します。ロゴ画像の2MB制限は、問い合わせ添付の共通上限ではありません。実際に受け渡すファイルで、アップロードとダウンロードの両方を試します。
3.FAQ検索と「問い合わせ前の候補表示」で自己解決を助ける
ポータルにはFAQを閲覧・検索する機能に加え、問い合わせの新規作成中に、入力内容から関連するFAQを探して案内する機能があります。顧客が問い合わせを送る前に、既に用意されている説明へ到達するための仕組みです。
検索の対象は公開済みのFAQ
FAQ検索は、公開済みのFAQの質問・回答を対象とします。検索欄に複数の語を空白で区切って入力した場合、各語が質問または回答に含まれるFAQを探すAND検索です。全角スペースも区切りとして扱います。
例えば「請求書 再発行」と入力した場合、「請求書」と「再発行」の両方を含むFAQを探す考え方です。必ず一つの文章に連続して含まれる必要はなく、質問と回答に分かれていても対象になります。検索語は最大8語、各語は最大80文字の範囲で処理します。
件名・説明を使い、最大3件の候補を案内する
新規問い合わせ画面では、件名と説明の入力を使って検索候補を作ります。型番のような英数字の組み合わせや、説明中の語句も検索候補に利用し、取得したFAQを整理して最大3件表示します。
この候補表示は、FAQがポータルで利用できるときに動作する構成です。すでにある問い合わせの編集時に、同じ候補表示が行われる仕組みではありません。
- 件名・説明を入力顧客が困っている内容を記入
- FAQを検索入力内容から検索語を作成
- 候補を最大3件表示関連する質問と回答の一部を案内
- 確認して次へFAQを読む、または問い合わせ送信
FAQを確認しても、問い合わせの入力画面を保てる
候補のFAQは別のタブで開く案内になっています。途中まで書いた問い合わせを残しながらFAQを読めるため、解決しなかった場合に入力を続けられます。ただし、問い合わせ内容の自動保存を保証する機能ではありません。入力元のタブを閉じたり再読み込みしたりする運用とは区別します。
候補が見つからない場合は、そのまま問い合わせを送信できます。FAQの取得に失敗した場合にも、エラー案内と再試行の導線があり、検索の成功を問い合わせ送信の必須条件にはしていません。
FAQの内容を整えることが、候補表示の使いやすさにつながる
この版の候補表示は、質問・回答に含まれる文字や語句を使う検索です。生成AIが回答文を作成したり、問い合わせを自動解決したりする機能ではありません。
「ログインできない」「請求書を再発行したい」など顧客が使う言葉をFAQに含め、製品名や型番の表記もそろえると、検索対象を整えられます。似たFAQを増やすだけでなく、質問の違い、対象製品、解決方法、更新責任者を整理することが運用のポイントです。
4.資料・見積・契約など、顧客へ公開する情報を選ぶ
同梱ポータルには、問い合わせ・FAQのほか、文書、見積、請求、製品、サービス、サービス契約、資産、プロジェクト、プロジェクトの作業や節目などを表示する構成が含まれています。
すべてが導入時に自動公開されるわけではありません。対象モジュールが有効で、ポータル側の公開設定と関連付けが整っていることが前提です。閲覧、作成、編集の可否も一律ではありません。
| 情報の種類 | 想定する使い方 | 確認する設定 |
|---|---|---|
| 問い合わせ・FAQ | 受付内容と経過を確認し、公開済みの解決方法を探す | 作成・編集権限、FAQの公開状態、コメントの公開区分 |
| 文書 | 利用案内など、顧客が参照する資料を共有する | 文書の公開対象、顧客との関連付け、ダウンロード可否 |
| 見積・請求 | 顧客に共有する取引情報を確認できるようにする | 公開項目、対象レコード、対象顧客・取引先 |
| 製品・サービス・契約・資産 | サポートに関係する対象情報を確認する | 有効なモジュール、対象情報との関連付け、閲覧範囲 |
| プロジェクト・作業・節目 | 顧客と共有する進行情報の参照に使う | 公開してよい内容、対象項目、関連レコードの範囲 |
「表示できる」と「業務処理を完結できる」は別に判断する
見積や請求の情報を表示する構成があっても、オンライン決済、電子契約、顧客による承認、帳票PDFの自動発行までが、このエクステンションで用意されるとは限りません。必要な業務ごとに、対象画面と別の機能を確認します。
同様に、ノーコードで独自に作ったすべての業務アプリを、そのままポータル公開できると考えるのも早計です。独自モジュールの公開には、標準のポータル対応、関連付け、API、画面、権限などの検討が必要です。
顧客本人・所属取引先・社内担当者の関係を整理する
顧客向けの公開では、利用者となる顧客担当者、所属する取引先、対象レコードの関連付けが重要です。同じ会社の複数担当者に共有するのか、本人に関係する情報だけを見せるのかを先に決めます。
所属する取引先
有効期間・利用状態
関連するレコード
公開文書・FAQ・コメント
新規作成の可否
編集・ファイル操作の可否
メニューを隠すことだけで公開権限を確認したつもりにせず、直接の詳細URLやファイルURLなども含め、利用者ごとのアクセスを確認します。権限の設定は、担当者向けの説明とは別に、実際の顧客アカウントで確かめます。
5.日本語表示・ログイン・正式ロゴで利用しやすい窓口を整える
日本語のログイン画面と操作案内
同梱ポータルには日本語の表示データがあり、ログイン、問い合わせ、FAQなどの画面を日本語で利用する構成です。初期のUI言語は日本語で、英語も選択肢に含まれています。
CRM全体の日本語化、社員の言語・時刻・通貨設定、CRM画面のレイアウト整理などは、この拡張の対象とは異なります。また、CRMから取得する独自の項目名や選択肢などは、実際の環境で表示を確認します。
顧客担当者をポータル利用者として設定する
顧客の利用は、CRMの顧客担当者情報をもとに設定します。ポータル利用の有効化、メールアドレス、利用可能期間、公開権限を整え、テスト用の担当者でログインを確認します。一般公開の会員サイトのように、誰でも自由に自己登録する仕組みとして説明するものではありません。
登録案内メールには、ポータルのログイン情報などを案内する処理があります。送信にはCRMの送信メール設定と通知テンプレートなどの設定が関わります。インストーラーは日本語メールテンプレートを一括変更しないため、件名・本文・差出人・リンク・実際の受信までを確認します。
パスワードの変更・再発行を案内する
ログイン画面にはパスワード再発行の導線があり、ログイン後のパスワード変更にも対応する構成です。同梱のパスワード規則は12〜128文字で、半角英大文字・小文字・数字・指定記号をそれぞれ含める方式です。
記号は無制限ではありません。指定記号は ! @ # $ % * - _ ? です。初期・再発行時の生成処理も、この規則を満たすパスワードを作ります。顧客向けには、利用開始時の変更方法と、メールが届かない場合の連絡先を案内しておきます。
自社のロゴをログイン画面と共通ヘッダーへ反映する
IPPortalInstallerの「ポータルのロゴ」から、ヘッダーロゴを登録できます。改善版ポータルを配置した後に画像を選び、プレビューと変更内容を確認して適用すると、ログイン画面とログイン後の共通ヘッダーへ反映します。
| 項目 | 内容 | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 形式 | PNG・JPEG・WebP。透過PNGも利用可。SVG非対応 | 正式なブランドデータから書き出す |
| 容量・寸法の上限 | 2MB以下、縦横4096px以内、合計900万画素以内 | 各条件をすべて満たす画像を用意する |
| 推奨サイズ | 150×40px、または300×80pxの横長画像 | 余白を含め、小さな表示で読めるか確認する |
| 画面の表示 | 縦横比を保持。最大200×40px、スマートフォンでは最大190×36px | アップロード上限と実際の表示サイズを区別する |
登録したロゴを標準ロゴに戻す操作も、確認後に適用する方式です。ロゴの変更は履歴から復元でき、ポータルの更新時には登録ロゴを保持する構成です。ロゴだけの変更では、CRMのコアファイル、CONFIG、DBは変更しません。
ロゴ登録は、窓口の見分けやすさを整える機能です。任意のページを自由にデザインするWebサイト制作機能とは範囲が異なります。
6.管理者の導入機能:確認してから配置し、接続を確かめる
ZIPのインポートと、ポータルの適用は別の手順
管理者がモジュール管理からZIPをインポートすると、導入用の設定メニューが登録されます。この時点では、CRMのコアファイルやポータル本体の適用は行いません。
実際の配置は、「改善版カスタマーポータル導入」の画面で事前確認を行い、「表示した内容を適用」を実行したときに進みます。設定画面を開くだけで、顧客向けの公開窓口が自動で完成するわけではありません。
事前確認では、配置先・URL・差分・権限を確認する
「事前確認・差分を表示」では、対象環境の構成、配置先、URL、ファイルの差分、書き込み権限を確認します。ファイルは新規、更新、変更なし、確認が必要なものに整理され、独自に変更された内容がある場合は比較して判断します。
確認が必要な差分には「内容を比較」の導線があります。CONFIGの内容は画面に表示せず、URL設定を扱います。大きなファイルやバイナリなど、文字列の比較表示にならない対象もあるため、すべてが同じ見え方になるとは限りません。
事前確認の有効期間は30分です。確認後に対象ファイルが変わると適用を停止するため、確認時と異なる内容をそのまま上書きしない仕組みになっています。時間が経過した場合や他の作業を行った場合は、もう一度確認します。
同梱のソースを配置し、接続URLを設定する
ソースはエクステンションZIPに含まれているため、別途手動でポータル本体を先に展開する必要はありません。CRMと同じサーバーの、CRMルート配下へ配置します。
設定では、CRMのURL、ポータルの公開URL、CRM側のポータルURLの関係を整えます。例えばCRMが https://example.jp/crm なら、通常の配置例は https://example.jp/crm/customerportal です。これは説明用のURLです。
ポータルCONFIGでは、接続に必要なURLを更新し、それ以外の設定は保持する方針です。設定が複雑な動的式や重複代入などになっていて自動変更できない場合は、処理を停止して確認を求めます。
CRM側にも、ポータルに必要なファイルを適用する
この拡張は、公開用のポータルフォルダーだけを置くものではありません。CustomerPortal API、顧客担当者関連、メール処理など、同梱ポータルの動作に必要なCRM側ファイルも適用対象です。
そのため、CRMの独自修正や他の拡張との関係を、導入前の差分と実際の環境で確認します。ファイルのバックアップに加えてCRMのDBもバックアップし、既にポータルを公開している場合は利用時間外などに作業します。
通信診断と、顧客の利用確認を使い分ける
「構成・通信を確認」では、対象CRMの構成、テンプレートなどのキャッシュの書き込み権限、ポータル公開URL、CRM APIの応答を確認します。
CRM APIの診断は、認証が必要であることを示す応答を確認するもので、顧客のログイン試験ではありません。診断が正常でも、メール受信、顧客ごとの公開権限、ファイル操作は別途テストする必要があります。
7.導入手順:公開内容の設計から利用テストまで
導入は、ポータルを配置する作業と、誰にどの情報を公開するかを整える作業を合わせて進めます。最初から対象情報を広げず、問い合わせとFAQなど必要な窓口を決めて試す進め方が考えられます。
- 1公開する範囲を決める
利用者、対象情報、編集可否、対応担当を整理する
- 2環境とライセンスを準備する
バックアップ、HTTPS、権限、必要構成を確認する
- 3事前確認して適用する
配置先・URL・差分を確認し、表示した内容を適用する
- 4標準設定と利用者を整える
公開権限、担当者、有効期間、送信メール、ロゴを設定する
- 5顧客の立場で試す
ログイン、FAQ、問い合わせ、添付、閲覧範囲を確認する
管理者が画面で行う基本操作
- CRMとファイル・DBのバックアップを取得し、管理者でZIPをインポートします。
- CRM設定のその他の設定から「改善版カスタマーポータル導入」を開きます。
- ライセンス管理で発行依頼情報を取得し、販売元が発行したライセンスを登録します。
- 配置フォルダーと公開URLを確認します。通常のフォルダー例は
customerportalです。 - 「事前確認・差分を表示」を実行し、確認が必要なファイルの内容を比較します。
- 確認後に「表示した内容を適用」を実行します。
- 「構成・通信を確認」と標準ポータル設定の確認を行い、ロゴを必要に応じて登録します。
- テスト用顧客で操作し、問題がないことを確かめて利用案内を行います。
最初に決める運用ルール
ポータルを使う目的、受付後の担当者、対応状況の更新タイミング、FAQの更新担当、添付してよい情報を決めます。「ポータルに書いたらすぐに回答される」と顧客が誤解しないよう、受付時間や連絡方法も案内します。
期限を過ぎた顧客担当者や、退職した担当者の利用を止める手順も必要です。公開範囲や担当者の設定を、利用開始時だけでなく、契約変更・担当交代時にも確認する運用にします。
8.適用履歴から復元する:ファイルと顧客データの扱い
変更するファイルを保存してから適用する
適用時は、変更対象となる既存ファイルを保存してから処理を進めます。「適用履歴・復元」では、処理の履歴を確認し、適用前の状態に戻す操作を行えます。
対象は、その処理で変更したCRM側ファイル、CRMのCONFIG、ポータルCONFIG、ポータルの配置対象ファイルなどです。元からあったファイルは内容とアクセス権を戻し、その処理で新しく配置したファイルは削除する構成です。
後から手動変更したファイルは、確認してから戻す
復元を始める前には、バックアップと復元対象ファイルを照合します。適用後に手動で内容を変更したファイルがある場合は停止し、後から行った修正を無条件には上書きしません。対象を比較・調整してから再試行します。
適用途中の失敗時は、書き換えを試みたファイルの自動復元を試みます。ただし、処理の中断や復元失敗まで必ず自動で解決するとは限りません。履歴の状態を確認し、「適用中・要確認」「復旧確認が必要」などの場合は復旧操作を行います。
その適用で変更したファイルを戻す
新規配置した対象ファイルを削除
後からの手動変更を検出したら停止
CRMのDB・顧客データ
ファイル・アップロードなど
管理情報・復元履歴・ライセンス情報
履歴の保存先と、公開防止の設定を保つ
管理情報と復元用バックアップは、CRM配下の storage/IPPortalInstaller/manager に保存されます。CONFIGのバックアップなども含むため、Webから直接閲覧できない状態を維持します。Apache用の拒否設定は同梱されていますが、Nginxなどでは同等の設定が必要です。
この保存先を削除すると、履歴からの復元ができなくなります。ロゴの旧画像も復元用に保持するため、手動で削除しないようにします。運用中のアップロードやキャッシュは、配置対象に含まれない限り、復元によって削除しない方針です。
アンインストールと、ポータルの復元は別操作
エクステンションを無効化・アンインストールしても、適用済みのポータルは自動では元に戻りません。適用前に戻してから拡張を外す場合は、先に履歴から復元します。複数回の適用がある場合は、新しい処理から順に戻します。
9.対象環境とライセンス:利用前に確認する条件
IPPortalInstaller 1.3.0は、OSS版VtigerCRM 8.4・8.4.0向けです。他のバージョンやクラウド版への適用を前提にはできません。標準ポータル用DBがあり、顧客担当者モジュールが有効であることも必要です。
| 確認項目 | この版の条件・範囲 |
|---|---|
| CRM | OSS版VtigerCRM 8.4・8.4.0。標準ポータルDB、顧客担当者の有効化が必要 |
| サーバー | CRMと同じサーバー、CRMルート配下への配置。変更先・管理用保存先への書き込み権限 |
| PHP・通信 | OpenSSL・cURL・tokenizer、CRMとポータルのHTTPS URL。PHPの構成はCRMの条件も確認 |
| ライセンス | 導入・更新・ロゴ変更は、CRM URLと環境IDにひも付く署名付きライセンスを登録 |
| 別途必要な設定 | 公開権限・SMTP・証明書・DNS・Webサーバー設定など。DBや公開権限を新規生成する機能は含まない |
ライセンスはファイルを登録する方式
設定画面のライセンス管理から発行依頼JSONを取得し、販売元が発行したライセンスファイルを登録します。発行依頼に含まれるのは製品名・CRM URL・環境IDで、CRMの顧客データや認証パスワードは含めません。
確認は署名付きファイルを使って行い、ライセンス認証サーバーへの通信は行いません。これはライセンス確認の方式についての説明です。ポータルとCRMの通信や、メール配送などの必要な通信まで不要になる意味ではありません。
未登録・期限切れ時の扱いを確認する
ライセンスが未登録、対象外、または期限切れの場合、配置・更新・ロゴ変更の事前確認と適用は利用できません。一方で、現在の設定や履歴・診断の確認、履歴からの復元は利用できます。すでに導入したポータルでの顧客のログイン・利用も継続できる設計です。
価格や発行条件、有効期限の設定は提供条件を確認します。URLや環境IDが変わる再構築・移転・検証環境への導入では、再発行の確認が必要です。DB・ファイルのバックアップには、復元履歴と storage/iPlannerLicense のライセンス管理情報も含めます。
10.活用例:保守サポートの窓口を、問い合わせとFAQから始める
ここでは、製品の保守サポートを想定した設計例を紹介します。実際の導入事例や効果測定の結果ではありません。
顧客が「探す・連絡する・経過を見る」を行えるようにする
まず、問い合わせの新規作成と確認、公開FAQの閲覧を対象にします。顧客は製品名や型番、困っている内容を入力し、表示されたFAQ候補を読み、解決しない場合に問い合わせを送ります。
担当者はCRMで内容を確認し、追加情報が必要なら顧客向けのコメントを残します。顧客はポータルで経過を確認し、必要な写真や情報を追加します。契約や資料の参照が必要になった段階で、公開範囲を確認しながら対象を広げる設計です。
運用開始前に、顧客の組み合わせを変えて確認する
本人に関係する情報、同じ取引先の別担当者に関係する情報、別会社の情報を用意し、意図した境界になっているかを確認します。管理者で見えている状態だけを確認して完了しないことが大切です。
| 確認する場面 | 確認する内容 |
|---|---|
| ログイン・利用期間 | 案内メールの受信、ログイン、パスワード変更・再発行、有効期間外や無効利用者の扱い |
| 問い合わせ | 新規作成、状態表示、コメント、完了後の操作、CRM側での受付内容 |
| FAQ | 公開済みと非公開の区別、複数語検索、候補表示、該当なし・通信失敗時の継続 |
| 公開権限 | 本人・同一取引先・別取引先、非公開コメント、詳細URLやファイルへのアクセス |
| 添付・見た目 | 実際に使うファイルのアップロードと取得、PC・スマートフォン、日本語表示、正式ロゴ |
| 復元と担当者 | 検証環境での適用履歴と復元、バックアップの保管、障害時の連絡担当 |
導入後は、窓口が使われる条件を見直す
問い合わせ件数だけで成果を判断せず、「顧客が必要なFAQを見つけられたか」「同じ確認の往復がどこで発生したか」「担当者が公開状況を更新できているか」などを見直します。
これらは運用上の評価の提案です。IPPortalInstallerにアクセス解析や自己解決率の自動測定が付いているという意味ではありません。必要な記録方法を決め、FAQと受付案内を継続して整えます。
11.IPPortalInstallerについてよくある質問
ポータルの導入だけで、CRMの情報はすべて公開されますか?
いいえ。公開モジュール、項目、権限、利用者と関連レコードなどを標準ポータル設定で整えます。この拡張の適用・復元は、DBや顧客データ、公開権限を変更しません。
FAQの候補表示はAIによる回答ですか?
この版では、入力した件名・説明から検索語を作り、公開済みFAQを検索して候補を案内します。生成AIによる回答作成ではありません。FAQが見つからない場合でも問い合わせを続けられます。
別サーバーのポータルや、CRMの外へ配置できますか?
このインストーラーは、同じサーバーのCRMルート配下へ配置する方式です。別サーバーへの転送やCRM外への配置は行いません。別ドメインで公開する場合のDNS・証明書・Webサーバー設定は別途必要です。
標準ポータル用のDBがなくても導入できますか?
この版は標準ポータル用DBがあることを前提とします。不足するDBや公開権限を新規に作る機能は含まれていません。対象構成を先に確認します。
アンインストールすれば、変更したファイルも戻りますか?
自動では戻りません。適用前へ戻す必要がある場合は、拡張を外す前に履歴から復元します。複数の適用があれば、新しい履歴から順に戻します。
通信診断が正常なら、そのまま顧客へ案内できますか?
診断だけでは、実際の顧客ログイン、メール配送、公開権限、添付の操作までは確認できません。顧客アカウントによる受入確認を行ってから案内します。
ノーコードで作成した独自モジュールも、すぐ公開できますか?
すべての独自モジュールが自動で対応するとは限りません。ポータル側の対応、関連付け、項目、API、権限、画面などを確認します。公開したい情報と顧客の操作を具体的にして検討します。
12.vtplusで、顧客が確認しやすい窓口を設計する
IPPortalInstallerは、日本語対応のカスタマーポータルを配置し、URL設定、ロゴ登録、差分確認、通信確認、履歴・復元までを管理画面から進めるエクステンションです。
配置されたポータルでは、問い合わせと経過確認、コメント、ファイル、公開FAQの検索などを利用できます。問い合わせ作成時のFAQ候補表示も、顧客が必要な説明を探す入口になります。
活用の出発点は、「誰に、何を、どこまで公開するか」です。vtplusを検討する際は、顧客に確認してほしい情報、現状の問い合わせの流れ、社員が対応する範囲を整理すると、必要な窓口と設定を具体化しやすくなります。
